2008年5月18日日曜日

西 博孝さんが頼り

>>ちょっと読んで見てください
肥後型石室の成立

これまでの石室各タイプの系譜(表1)と小鼠蔵1号石室の諸属性を考えると、いわゆる肥後型石室は地下式板石積石室墓の天井部と明神タイプの石障、それか ら谷口古墳の横口から入るという3要素を結合させて、新たに肥後南部で創出されたものと考えることができます。このような高木氏の推定は正しいのでしょう か。

肥後型石室肥後南部成立説の検証
 肥後型石室が本当に肥後南部の八代付近で、それまでにあった地下式板石積石室墓を主要な母体として新たに創出されたとする自説が正しいかどうかをさらに異なる角度から高木氏は考察をしています。。
 小鼠蔵1号石室が登場する直前の地下式板石積石室墓として、水俣市の初野3号墳が知られています。この初野3号の石室平面プランは、方形や長方形ではな く、楕円形という薩摩北部によく見られる円形平面への過渡期を示すと考えられるものです。この点では、小鼠蔵1号とは異なった点です。それで初野3号の石 室及び天井部の石材は、偏光顕微鏡による分析で、単斜輝石・斜方輝石・角閃石安山岩であることがわかっています。この石材は、水俣川が八代海に流れ込む海 辺の右岸にある大崎の露頭の石材であることがわかっています。 一方、小鼠蔵1号の石室及び天井部の石材は砂岩と安山岩が用いられていることがわかってい ます。そのうちの安山岩は、同じく偏光顕微鏡による分析から単斜輝石・斜方輝石・角閃石安山岩であることが判明し、水俣の大崎の石材であることがわかりま した。

 つまり地下式板石積石室墓に使われていた石が海路32kmも離れた水俣の大崎から小鼠蔵1号のある八代まで運ばれたことは間違いありません。肥後型石室が地下式板石積石室から生まれたという論拠となるものです。
 この仮設をさらに裏付ける資料を見ていきたいと思います。表2(高木1999)は右2つ の欄は熊本県外、それ以外は熊本県内における肥後型石室を年代順と地域別に分けたものです。表は左から右に熊本県南部から北部に至る各地を示しています。 そして石室各部位を4つに分けて、そこに使用されている石材を示しています。宇土半島南岸では、重盛山が一番古くに造られ仕切と石障に大崎の安山岩が使わ れています。ところがその次に造られた児島崎では別の石材である地元の石材が使われています。


 宇土半島北岸ではまず最初に城1号が造られ、壁体に大崎の安山岩が使われています。その次の代のヤンボシ塚、さらにその後の小田良でも同じく壁体に同種の安山岩が使われています。
 熊本平野東部では、もっとも古い小坂大塚では壁体に大崎の安山岩が使われ、次の代の井寺では安山岩は使われず、地元の石が使われています。
 熊本平野北西では、千金甲(せごんこう)1号は壁体に大崎の安山岩が使われ、次代の富ノ尾1号では壁体、仕切、石障に同じ安山岩が使われています。
 菊池川流域では、最も古い銭亀塚では大崎の安山岩はまったく使用されず、地元の石材が使われ、次代の石川山7号、伝左山ではすべての部分に大崎の安山岩が使われています。

 これらの事実から以下のことがわかります。
 肥後型石室は、地下式板石積石室墓を中心的な土台とし、他の埋葬施設の要素を取り込むことで創出されたということです。それは地下式板石積石室墓と同じ 石材、同じ技術系譜で天井部が造られたということ。しかも大崎の石材を使っただけでなく、大崎の工人が赴き、そこの地で石室を造ったということです。本当 に大崎の工人が赴いたかどうかは、表2から端的に理解することができます。菊池川流域例を除いて、各地の最古期の石室はすべて大崎の石が使われ、その後は 地元の石材が使われていることは石材とその使用法に習熟した工人達がそれぞれの場所に出かけて、その地で最も古い石室を造り、その後は地元の石を使って 造ったと考えられからです。

 そして石室築造の流れは、南から北に急速に普及していることです。これは肥後型石室が八代市で初めて造られたという想定が妥当であることを各古墳の年代 からも、そして各地での普及と変遷という面からも示しています。そしてこの普及の流れは熊本県内の南から北に縦断するに止まらず、県外にさらには遠く吉備 地域にまで至っていることは重要です。
 この研究を通じて高木氏は肥後型石室の祖型である地下式板石積石室墓を、これまで熊襲や隼人のお墓として考えていたこれまでの考古学研究の姿勢そのもの に大いなる疑問を投げかけています。つまりこれまでの考古学のとらえ方では、大和や筑紫の高度な文化が遠く及ばない辺境の文化である「熊襲や隼人」の遅れ た埋葬法が九州を縦断し、瀬戸内や出雲あるいは伊勢までに直接あるいは間接に影響を与えるとは考えられないからです。

>>まんざら水俣説もあなどれません。

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